私は幕府の外務省に出て翻訳をしていたのであるが、外国奉行から咎 められた。「ドウも貴様はアメリカ行の御用中不都合があるから引っ込んで謹慎せよ」と言う。勿論 幕府の引っ込めというのは誠に楽なもので、外に出るのは一向構わぬ。ただ役所に出さえしなければ宜 しいのであるから、一身のためには何 ともない。却って暇になって難有 いくらいのことだから、命令の通り直ぐ引っ込んで、その時に西洋旅案内という本を書いていました。
日本にて平生肉食 に馴れざる人は、船に乗るとき、漬物、醤油、其外の食物 、少し計 用意すべし。外国風の食物のみにては、はじめ二、三十日の間 困るものなり。
婦人の前にて烟草をのむなどは、甚だ失礼のことゝせり。謹 むべし。このことは船中計 に限らず、彼国 一体の風俗なるゆへ、上陸の後も忘るべからず。
彼国の大便所は、家の内にあるものも船中にあるものも、其模様少しも替らず。一段高き所に円 き穴ありて、この穴に腰を据 る趣向 なり。然 るに初 て外国へ行く人など、其ことを心得ずして、日本流にすると便所を汚 し、かならず外国人に笑はれて、面目次第もなきことあり。よく\/つゝしむべし。
災難請合 とは、商人の組合ありて、平生 無事の時に人より割合の金を取り、万一其人へ災難あれば組合より大金を出 して其 損亡を救ふ仕法 なり。