ステンレス鋼 wikipedia|無料辞書
ステンレス鋼(Stainless steel)は、
さびにくくするために
クロムや
ニッケルを含ませた合金
鋼である。「ステンレススチール」や「不銹鋼」(ふしゅうこう)、「ステンレス」、または「ステン」などと呼ばれる。
JISにおいて主に「SUS」の略号が付けられる事から「サス」とも呼ばれる。
◆ 特徴
ステンレス鋼は、含有するクロム(Cr)が空気中で
酸素と結合して表面に
不動態皮膜を形成しており、
耐食性が高い。ステンレス鋼が作る不動態皮膜は5nm程のごく薄いクロムの水和オキシ酸化物CrO
x(OH)
2-x・nH
2Oが主体で構成されている。
クロムが作る不動態皮膜は硝酸(HNO3)のような酸化性の酸に対しては大きな耐蝕性を示すが、硫酸(H2SO4 )や塩酸(HCl)のような非酸化性の酸に対しては耐蝕性が劣る。このため、ニッケル(Ni)を8%以上加えて非酸化性の酸にも耐蝕性を高めている。
オーステナイト系ステンレス鋼は非磁性であるが、フェライトになると磁性を備える。マルテンサイト系ステンレス鋼は強度と共に耐摩擦性が高いが耐蝕性が少し劣る。
オーステナイト系ステンレス鋼は、塩化物を含む高温高圧環境に曝されると
水素脆化による応力腐蝕割れを起こすことがある
[徳田昌則他著 『金属の科学』 ナツメ社 2005年12月28日初版発行 ISBN 4816340408]。
◆ 用途
ステンレス鋼は錆を防ぐための
めっきや塗装をしなくても済み、屋外や湿気のある場所、化学薬品を扱う機械器具 (13Cr)、
厨房設備 (18Cr/18Cr-8Ni) で用いられる。また、構造物や
鉄道車両の外面、部品に用いられる (18Cr-8Ni)。
マルテンサイト系ステンレスは
焼き入れを行うことができるため、その硬度を利用して包丁などの刃物鋼として多用される。チタンは刃物として使用できるほどの硬度を備えるが、加工が難しく価格も高くなるために、ステンレス鋼に比べれば利用は少ない。
近年は、
電磁調理器対応用の、ステンレス鋼でできた
鍋や
やかんが多く販売されているが、その多くは普通鋼やSUS430等の磁性を持つ鋼板の両側に、非磁性だが耐食性に優れたSUS304を2枚サンドウィッチ状に接合させた
3層鋼板で製造されている。
基本的な製造方法は普通鋼と同じだが、ステンレス鋼は普通鋼より強度が高いため、
冷間圧延時には専用の圧延機を用いる(一部例外あり -を参照)。
◆ JISによる分類
JISによれば、ステンレス鋼は、その金属組織により次の5つに分類される。
・
マルテンサイト系ステンレス鋼 (martensitic stainless steels)
・
フェライト系ステンレス鋼 (ferritic stainless steels)
・
オーステナイト系ステンレス鋼 (austenitic stainless steels)
・ オーステナイト・フェライト二相ステンレス鋼 (austenitic-ferritic duplex stainless steels)
・
析出硬化ステンレス鋼 (precipitation hardening stainless steels)
この内、炭素の少ないフェライト系および炭素の多いマルテンサイト系のステンレス鋼は一般に鉄(Fe)-クロム(Cr)合金のクロム鋼であり、オーステナイト系ステンレス鋼は鉄(Fe)-クロム(Cr)-ニッケル(Ni)合金のクロム-ニッケル鋼である。
ステンレス鋼として最も代表的なものは、オーステナイト系の18%クロム(Cr)8%ニッケル(Ni)の(18-8)ステンレス鋼である。
JISで規定するステンレス鋼材料の規格票の例をいくつか示す。
・ JIS G4303-1998 ステンレス鋼棒
・ JIS G4304-1999 熱間圧延ステンレス鋼板及び鋼帯
・ JIS G4305-1999 冷間圧延ステンレス鋼板及び鋼帯
また、代表的なステンレス材料の成分を上記から一部引用する。なお、
厚板・
鋼管などのステンレス鋼でも、成分系は基本的に薄板と同じである。規格名の後ろに「L」をつけることがある(SUS304Lなど)が、これは炭素量を極めて低く制御した鋼種であることを意味している。
また、JIS規格品以外にも各メーカーの独自鋼種が数多く存在する。
ステンレス鋼の耐蝕性能は、基本的にCrの含有量で決定され、12-26%の範囲で含まれる。その他、Mo・Ti・Nbなどの添加元素も、耐蝕性の向上に寄与している。6-22%の範囲で含まれるNiも耐蝕性に貢献するが、オーステナイト相を固定化するのがもっとも重要な役割である。
700℃前後の焼鈍し程度の加熱でクロム(Cr)が炭素(C)と結合して炭化物が粒界に析出することがあり、クロムの減少によって耐蝕性が損なわれることがある。これは
粒界腐蝕と呼ばれ、
ニオブ(Nb)や
チタン(Ti)が少量添加されていれば、クロムの前にニオブやチタンが炭化物となるために粒界腐蝕を起こさずに耐蝕性が保たれる。このようなステンレスは安定型ステンレス・スチールと呼ばれる
。
JIS G 0203「鉄鋼用語」の定義によれば、ステンレス・スチールは
鉄に約10.5%以上のクロムを含ませた
合金を指し、しばしば
ニッケルも含まれるとされている。
◆ 表面仕上げ
ステンレス鋼は、主にその用途と求められる意匠性によって様々な表面仕上げを施して使用される。表面処理の中で、意匠的に鏡面に磨いたもの、ヘアライン加工したものは建築物の中で用いられることがあり、素地での仕上げとなる場合は傷を保護するビニールなどの皮膜が貼り付けられていることが多い。代表的なものは以下のとおり。